「さっきも言ったけど。質問のところだけ全部平仮名なんだよね。これが、漢字が読めなくても解けるよって証拠じゃん」 「……だ、だったら、何が答えだっていうのっ!?」 ことごとく匠が反論するからか、香苗もだいぶイライラしている様子だった。 「そうだよ匠くん。あれでもない、これでもないなら、他に答えはないよ?ぼくらはお手あげだ」 大きな手をあげる浮夫の仕草は、比喩すればまさに襲い掛かる寸前の熊のようだと匠は思った。 広間が異常に蒸し暑かったのも、彼のせいではないかと訝りたくなるほどだ。