匠の意図をどう読んだのかは分からないものの、宗は引き下がるように「そういうことか」と舌打ちした。 「お前がガキだってことを、また忘れてたってわけか……」 渋面を作って腕組みをし、だるそうに首を回す宗。 彼に代わり、説明役を買って出たのは秋だった。 持っていた自分のメモ帳を破り、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」と書き上げていく。 小説家らしい、丸すぎない、角ばってもいない、均整のとれた美しい字だった。