━━Ⅰ━━ 「うっかりお嬢ちゃんの罠にひっかかったが、これで犯人は分かったな」 挑発的な視線を匠に送り、宗は満足げに椅子に寄りかかる。 「そ、宗先生。これ、干支は合ってるみたいですけど、ひとつ足りないですよ」 「ああ。『ねずみ』だろ?つまり、それを表す『子(こ)』の文字だ」 だから犯人は、と野太い声で、またも親指に似た人差し指を立てた。 「アンタだったんだよ、坊主のお母様の桜庭真紀子!」