「ほ、ほら。片方はメモ紙を握ってるわけで。もし犯人が戻ってきて見つかれば取られちゃうかもって思って、時間稼ぎとして、どっちに握り込んでるか分からなくするために……」 「それは多分ないですね」 真っ先に否定したのは秋だった。 「僕が手を確認したときに、はみ出してましたから。必死に隠そうとしたなら、はみ出ないように握り込むはずですしね」 「そう、ですか……」 香苗の推理は容易く却下された。 会心の閃きだったのだろう、彼女は憤慨気味にココアに口をつけた。