「あっ、あれ!」 藤島が指差す方を見ると、泣きそうな顔の詩音の手を、ニヤニヤした顔の男が引っ張っている。 ヤバイ・・・ 俺たちは人ごみをかき分けて詩音の方へ行く。 「詩音!」 俺が腕を掴みそう呼ぶと、詩音の目からは涙が溢れてきた。 「そいつ、俺の彼女だから・・・返して。」 と言うと、俺たちを見てビビった顔をしたその男は 「なんだよ・・・男いたのかよ・・・」と ぶつぶつ言いながら行ってしまった。