「何かあったんか?」
「んー?何もないで。なーんも」
「お前の嘘はわかり易いな」
「やろ?俺、昔っから嘘つくのだけは苦手やったからなー」
俺から見ても、ケイさんは俺やメーシーのようにのらりくらりとかわして生きているようなタイプではない。30年も付き合いがあるのだから、ハルさんにはそれが一番よくわかっていることだろう。
その証拠に、苦虫を噛み潰したような顔をし、ゆらゆらと美緒を揺らすケイさんを見上げていた。
「俺、か」
「ん?」
「お前らの不仲の原因」
「別に不仲ちゃうで」
「ほな何や」
さすがの聖奈も口を挟むべきではないとわかったのか、あの一言以降何かを言い出す気配はなくて。ちょうどいいタイミングでメーシーが戻って来ないかなーなどと思いながら、俺は綺麗になった皿を志保さんに渡してコーヒーを受け取った。
「なんかさー」
「ん?」
「最近になってよぉ思うんやけど」
「おぉ」
「りんが俺とずっと付き合うてた理由、せーとやったんちゃうかなて」
生徒?何の話だ。と、事情がわからない俺は頭をフル回転させる。そして、キッチンには戻らず手近な椅子を引いて来て腰かけた志保さんも同じく。
志保さんに勝とうなど、百年どころか千年も万年も早いのだけれど、ラッキーなことに休日の我が家はこの人達の溜まり場になっていて。酔った大人達の会話を時々聞いていただけに、生徒が「せーと」で、それがハルさんを差すということを志保さんの脳内コンピューターよりも早く変換し直すことが出来た。
「どうゆう意味や」
「ほら、あいつフラれた立場やん?」
「まぁ…な」
「やっぱ好きやったんやろなーって」
「何十年経って言うてんねん、そんなこと」
「何十年もずっと」
「子供らの前であほなこと言うな」
「ほな、ちーちゃんの前やったらええか?」
「ええわけあらへん。千彩の前でそんな話してみぃ…出入り禁止どころでは済まさへんからな」
ここまで聞けば、さすがに赤の他人の志保さんでも読み取れる。
いや、「さすが志保さん」と言うべきだろうか。「ふぅん」と口元に手を遣り、何度か頷いて読み取ったことを告げてくれた。
「んー?何もないで。なーんも」
「お前の嘘はわかり易いな」
「やろ?俺、昔っから嘘つくのだけは苦手やったからなー」
俺から見ても、ケイさんは俺やメーシーのようにのらりくらりとかわして生きているようなタイプではない。30年も付き合いがあるのだから、ハルさんにはそれが一番よくわかっていることだろう。
その証拠に、苦虫を噛み潰したような顔をし、ゆらゆらと美緒を揺らすケイさんを見上げていた。
「俺、か」
「ん?」
「お前らの不仲の原因」
「別に不仲ちゃうで」
「ほな何や」
さすがの聖奈も口を挟むべきではないとわかったのか、あの一言以降何かを言い出す気配はなくて。ちょうどいいタイミングでメーシーが戻って来ないかなーなどと思いながら、俺は綺麗になった皿を志保さんに渡してコーヒーを受け取った。
「なんかさー」
「ん?」
「最近になってよぉ思うんやけど」
「おぉ」
「りんが俺とずっと付き合うてた理由、せーとやったんちゃうかなて」
生徒?何の話だ。と、事情がわからない俺は頭をフル回転させる。そして、キッチンには戻らず手近な椅子を引いて来て腰かけた志保さんも同じく。
志保さんに勝とうなど、百年どころか千年も万年も早いのだけれど、ラッキーなことに休日の我が家はこの人達の溜まり場になっていて。酔った大人達の会話を時々聞いていただけに、生徒が「せーと」で、それがハルさんを差すということを志保さんの脳内コンピューターよりも早く変換し直すことが出来た。
「どうゆう意味や」
「ほら、あいつフラれた立場やん?」
「まぁ…な」
「やっぱ好きやったんやろなーって」
「何十年経って言うてんねん、そんなこと」
「何十年もずっと」
「子供らの前であほなこと言うな」
「ほな、ちーちゃんの前やったらええか?」
「ええわけあらへん。千彩の前でそんな話してみぃ…出入り禁止どころでは済まさへんからな」
ここまで聞けば、さすがに赤の他人の志保さんでも読み取れる。
いや、「さすが志保さん」と言うべきだろうか。「ふぅん」と口元に手を遣り、何度か頷いて読み取ったことを告げてくれた。

