「はるには言わないって約束したのになぁ」
「あー…昔のこと?」
「マナも聞いてたん?」
「うん。ごめんね」
素直に謝罪した俺に、ちーちゃんは笑顔のまま首を横に振ってくれた。
「大丈夫。はるがもう苦しくないように、ちさがもっとはるのこと愛してあげるから」
「そっか。強いね、ちーちゃんは」
「だってちさ、大人やもん」
えへんっと胸を張るちーちゃんは、何やらとても自慢げで。それにふっと笑い声を零すと、トントンと軽く肩が叩かれた。
「マナ、そろそろアイリを送った方がいい。ご家族が心配してるかもしれない」
「あー、そだね」
「愛里ちゃん帰るん?泊まっていけばいいのに。けーちゃんのお部屋使っていいよ?」
「あっ…いえ。私はこれで。佐野君の彼女さんにも申し訳ないですし」
「佐野君のカノジョさん?」
「セナのことだよ」
「あっ、セナか!そっかそっか!セナははると一緒でヤキモチやきさんやからね」
「そだよ。拗ねちゃって大変なんだから」
あははっと笑う俺の前を、白いニットワンピースを着たちーちゃんが通り過ぎる。そして、ソファで中腰になっていた愛里の後ろで立ち止まってペコリと頭を下げた。
「ごめんね。セナにはちさから言っとくね」
「えっ!?いいんです!図々しくお邪魔したのは私の方ですから!」
「また遊びに来てね?愛里ちゃん」
「あっ…はい」
にっこりと笑うちーちゃんに「それでも…」と食い下がれる人物を、俺は未だかつて一人も見たことがない。愛里も例に漏れず、思わず首を縦に振ってしまった人物の一人だ。
この笑顔はある意味魔性。そんなことを思いながらうんうんと頷く俺に向かい合い、ちーちゃんは聖奈と同じ猫目を緩やかに細めた。
「セナのこと怒った?」
「怒ってねーよ?」
「マナの嘘つきさん」
「こらこら」
無邪気に笑うちーちゃんは、ただただ素直なだけだ。そう思いたい。
「めーしーとしーちゃんによろしくね」
「ん?」
「ベッキーも送ってくでしょ?」
「あぁ、うん」
「マリちゃんが「あの魔女め!」って怒ってたよ」
「あちゃー。怒りん坊だね、あの人は」
「ねー」
にこやかに話が進んでいるようで、それが実はそうでもない。確実に何かを察しているちーちゃんは、敢えてそれを言わずに笑っているのだ。それが計算の上でなのか、それとも天然なのかはわからないけれど、ちーちゃんファンの一人としては後者を願う。
「んじゃ、俺行ってくるから」
「いってらっしゃーい。ベッキー、愛里ちゃんまたね」
大きく手を振るちーちゃんは、きっと今からリビングでお気に入りのアニメチャンネルを見るのだろう。そして、お気に入りのパンのヒーローと共に憎めない悪役を退治する。少しばかり…いや、たいぶと幼い趣味だけれど、それで溜め込んだモノを発散してくれるならばいい。気の抜き方など人それぞれなのだから。
「あー…昔のこと?」
「マナも聞いてたん?」
「うん。ごめんね」
素直に謝罪した俺に、ちーちゃんは笑顔のまま首を横に振ってくれた。
「大丈夫。はるがもう苦しくないように、ちさがもっとはるのこと愛してあげるから」
「そっか。強いね、ちーちゃんは」
「だってちさ、大人やもん」
えへんっと胸を張るちーちゃんは、何やらとても自慢げで。それにふっと笑い声を零すと、トントンと軽く肩が叩かれた。
「マナ、そろそろアイリを送った方がいい。ご家族が心配してるかもしれない」
「あー、そだね」
「愛里ちゃん帰るん?泊まっていけばいいのに。けーちゃんのお部屋使っていいよ?」
「あっ…いえ。私はこれで。佐野君の彼女さんにも申し訳ないですし」
「佐野君のカノジョさん?」
「セナのことだよ」
「あっ、セナか!そっかそっか!セナははると一緒でヤキモチやきさんやからね」
「そだよ。拗ねちゃって大変なんだから」
あははっと笑う俺の前を、白いニットワンピースを着たちーちゃんが通り過ぎる。そして、ソファで中腰になっていた愛里の後ろで立ち止まってペコリと頭を下げた。
「ごめんね。セナにはちさから言っとくね」
「えっ!?いいんです!図々しくお邪魔したのは私の方ですから!」
「また遊びに来てね?愛里ちゃん」
「あっ…はい」
にっこりと笑うちーちゃんに「それでも…」と食い下がれる人物を、俺は未だかつて一人も見たことがない。愛里も例に漏れず、思わず首を縦に振ってしまった人物の一人だ。
この笑顔はある意味魔性。そんなことを思いながらうんうんと頷く俺に向かい合い、ちーちゃんは聖奈と同じ猫目を緩やかに細めた。
「セナのこと怒った?」
「怒ってねーよ?」
「マナの嘘つきさん」
「こらこら」
無邪気に笑うちーちゃんは、ただただ素直なだけだ。そう思いたい。
「めーしーとしーちゃんによろしくね」
「ん?」
「ベッキーも送ってくでしょ?」
「あぁ、うん」
「マリちゃんが「あの魔女め!」って怒ってたよ」
「あちゃー。怒りん坊だね、あの人は」
「ねー」
にこやかに話が進んでいるようで、それが実はそうでもない。確実に何かを察しているちーちゃんは、敢えてそれを言わずに笑っているのだ。それが計算の上でなのか、それとも天然なのかはわからないけれど、ちーちゃんファンの一人としては後者を願う。
「んじゃ、俺行ってくるから」
「いってらっしゃーい。ベッキー、愛里ちゃんまたね」
大きく手を振るちーちゃんは、きっと今からリビングでお気に入りのアニメチャンネルを見るのだろう。そして、お気に入りのパンのヒーローと共に憎めない悪役を退治する。少しばかり…いや、たいぶと幼い趣味だけれど、それで溜め込んだモノを発散してくれるならばいい。気の抜き方など人それぞれなのだから。

