「嫌な気分にさせてごめん。悪い奴じゃないんだけど」
「いやっ。図々しく来ちゃった私が悪いから」
「ここがうちの実家だったら、遅いから泊まってきなよって言うんだけどさ」
「え?ここ、佐野君の家じゃないの?」
驚いて目を丸くする秋山さんは…所謂「天然」というやつなのだろうか。表札は「三木」と掲げられ、三木夫妻に出迎えられただろうに。
「俺ん家はね、このマンション群の中じゃなくて、ちょっと離れた一戸建て群の中にあるよ。ここは彼女の実家」
「どうしよう…私凄く失礼なことしてるよね…」
「無理やり連れて来たのは私。アイリが気にする必要なんてないわ。それに、kittyが気に入らないのは、アイリじゃなくて私だから」
「え?」
緩やかに笑顔を作ったレベッカに、秋山さんの目が更に丸くなる。うふふっと笑いながら口元に添えられた手を取り、そっと引き寄せて指先に口づけた。
「出てんぞ、本性」
「そろそろ疲れちゃって。kittyも不審がってるし」
「do not worry,Rebecca」
「thank you,Manato」
「かーちゃー」
「うん。台無しだよ、honey」
どうやら眠さが限界にきたらしい美緒の泣き声に、せっかく甘く纏めようと思っていた空気が総崩れだ。そこはちーちゃんに似なくてもいい。と、グズり始めた美緒の背をゆっくりと上下に擦る。
「かーちゃー。う゛ぅ」
「はいはい。かーちゃん今お仕事中」
「かーちゃー。だーだー」
「はい。コーヒーをお持ちしましたよ」
「おぉ。サンキュ」
「あとは各自でお願いしますね」
テーブルにトレイを置き、聖奈は舌打ちでもしたそうな表情で美緒に手を伸ばした。
「愛里さんを送って行くんですよね?」
「おぉ。そのつもりだけど」
「愛里さん、セナは娘を寝かせてきますので、これで失礼しますね」
「あっ…はい」
「ごゆっくりどうぞ」
「あのっ…」
俺だけを見てくれるのは嬉しい。聖奈がよそ見をするような女だったとしたら、俺は間違いなく他を選んでいることだろう。
けれど、こうして嫉妬に顔を歪ませる女は、ハッキリ言って嫌いだ。
「気にすんな、愛里」
「えっ…?」
「聖奈、美緒連れてさっさと部屋行け」
「・・・」
「レベッカと志保さんの店に寄ってから帰るから遅くなる。ちーちゃんから目を離すなよ」
「遅くなる必要がどこにあるんですか?それに、話は?」
「明日だ。さっさと行け」
返事もせずに背を向けた聖奈を呼び止めようとした俺の唇に、細い指がそっと触れた。それに制されて言葉を呑み込み、無言のままグッと眉根を寄せてトレイに乗せられたままのコーヒーカップのセットを始める。
帰ったら話の前に説教だ。そう決めて。
「いやっ。図々しく来ちゃった私が悪いから」
「ここがうちの実家だったら、遅いから泊まってきなよって言うんだけどさ」
「え?ここ、佐野君の家じゃないの?」
驚いて目を丸くする秋山さんは…所謂「天然」というやつなのだろうか。表札は「三木」と掲げられ、三木夫妻に出迎えられただろうに。
「俺ん家はね、このマンション群の中じゃなくて、ちょっと離れた一戸建て群の中にあるよ。ここは彼女の実家」
「どうしよう…私凄く失礼なことしてるよね…」
「無理やり連れて来たのは私。アイリが気にする必要なんてないわ。それに、kittyが気に入らないのは、アイリじゃなくて私だから」
「え?」
緩やかに笑顔を作ったレベッカに、秋山さんの目が更に丸くなる。うふふっと笑いながら口元に添えられた手を取り、そっと引き寄せて指先に口づけた。
「出てんぞ、本性」
「そろそろ疲れちゃって。kittyも不審がってるし」
「do not worry,Rebecca」
「thank you,Manato」
「かーちゃー」
「うん。台無しだよ、honey」
どうやら眠さが限界にきたらしい美緒の泣き声に、せっかく甘く纏めようと思っていた空気が総崩れだ。そこはちーちゃんに似なくてもいい。と、グズり始めた美緒の背をゆっくりと上下に擦る。
「かーちゃー。う゛ぅ」
「はいはい。かーちゃん今お仕事中」
「かーちゃー。だーだー」
「はい。コーヒーをお持ちしましたよ」
「おぉ。サンキュ」
「あとは各自でお願いしますね」
テーブルにトレイを置き、聖奈は舌打ちでもしたそうな表情で美緒に手を伸ばした。
「愛里さんを送って行くんですよね?」
「おぉ。そのつもりだけど」
「愛里さん、セナは娘を寝かせてきますので、これで失礼しますね」
「あっ…はい」
「ごゆっくりどうぞ」
「あのっ…」
俺だけを見てくれるのは嬉しい。聖奈がよそ見をするような女だったとしたら、俺は間違いなく他を選んでいることだろう。
けれど、こうして嫉妬に顔を歪ませる女は、ハッキリ言って嫌いだ。
「気にすんな、愛里」
「えっ…?」
「聖奈、美緒連れてさっさと部屋行け」
「・・・」
「レベッカと志保さんの店に寄ってから帰るから遅くなる。ちーちゃんから目を離すなよ」
「遅くなる必要がどこにあるんですか?それに、話は?」
「明日だ。さっさと行け」
返事もせずに背を向けた聖奈を呼び止めようとした俺の唇に、細い指がそっと触れた。それに制されて言葉を呑み込み、無言のままグッと眉根を寄せてトレイに乗せられたままのコーヒーカップのセットを始める。
帰ったら話の前に説教だ。そう決めて。

