「美緒はもう食べ終わったでしょ?」
「やー」
「ダメですよ。ごちそうさまをしたんですから、もうお終いです」
「むー。かーちゃや!」
「かーちゃんが悪いんじゃありません。美緒が悪いんです。さぁ。とーちゃんがご飯を食べれないので、美緒はこっちです」
「やー!」
食事の時間がずれると、これだからややこしいのだ。眠くなった時以外は俺にベッタリな美緒が、食事中だからと言って膝の上を離れてくれるはずがない。それをわかっていて毎回離そうとするのだから、聖奈も相当しつこ…いや、根気強いと言える。
「やりゃいいだろ」
「美緒は皆と一緒にご飯を済ませて、もうごちそうさまをしました」
「ガキなんだから食ってんの見りゃほしくなるって」
「そう思うなら、もっと早くに帰ってきてください。そうすれば一緒にご飯が食べれますから」
「あー…はい。すみません」
いつも出てくる助け舟が無いだけに、さっさと負けを認めた方が賢明だろう。アッサリ引いた俺に、秋山さんがぷっと噴き出した。
「おかしー。さすがの佐野君も、彼女さんには弱いんだね」
「いやいや。コイツが強いだけなんだって」
「そんなこと言って、彼女さんのこと大好きなのわかるよ」
「ん?」
「いいなー。羨ましい」
「そればっか」
ふっと頬を緩ませた俺に、二人分の冷たい視線が突き刺さる。
「マナ、勇気あるデスネ」
「は?」
「さっき言ったばかりなのに。ただの女好きという判断でいいですか?」
「いいわけねーだろ」
「そんなっ!違いますよっ!」
「そんな慌てなくていいよ、秋山さん」
スプーンで遊び始めた美緒の手を取りながら冷静にツッコんだ俺と、慌てて否定する秋山さん。ここで俺まで「愛里」と呼んでしまったら色々と不都合が起こりそうなので、取り敢えずそれは控えるとしよう。
「でもっ、佐野君っ」
「かーちゃんはヤキモチ妬きだからなー、美緒」
「とーちゃー」
首元に巻きつこうとする美緒をよしよしと宥め、「ごちそうさまでした」と手を合わせて席を立つ。
「さて…と。腹もいっぱいになったし、コーヒー飲んだら秋山さん送ってこうかな」
「えっ?いいよっ!一人で帰れるから!」
「一人じゃ危ねーから送るよ」
「いいよっ!悪いし…」
チラリと遠慮気味に聖奈に向けられる視線。それに気付かないほど、俺もレベッカもハルさんの言う「阿呆」ではない。
「さすがMEIJIの息子デスネ。フェミニスト」
「でも・・・」
「とゆーわけだから聖奈、coffee please」
「・・・はい」
不満げな聖奈をキッチンに押しやり、眠気を訴える美緒の背をトントンと叩きながら「でも…でも…」と聞き分けの悪い秋山さんの隣へと腰を下ろした。
「やー」
「ダメですよ。ごちそうさまをしたんですから、もうお終いです」
「むー。かーちゃや!」
「かーちゃんが悪いんじゃありません。美緒が悪いんです。さぁ。とーちゃんがご飯を食べれないので、美緒はこっちです」
「やー!」
食事の時間がずれると、これだからややこしいのだ。眠くなった時以外は俺にベッタリな美緒が、食事中だからと言って膝の上を離れてくれるはずがない。それをわかっていて毎回離そうとするのだから、聖奈も相当しつこ…いや、根気強いと言える。
「やりゃいいだろ」
「美緒は皆と一緒にご飯を済ませて、もうごちそうさまをしました」
「ガキなんだから食ってんの見りゃほしくなるって」
「そう思うなら、もっと早くに帰ってきてください。そうすれば一緒にご飯が食べれますから」
「あー…はい。すみません」
いつも出てくる助け舟が無いだけに、さっさと負けを認めた方が賢明だろう。アッサリ引いた俺に、秋山さんがぷっと噴き出した。
「おかしー。さすがの佐野君も、彼女さんには弱いんだね」
「いやいや。コイツが強いだけなんだって」
「そんなこと言って、彼女さんのこと大好きなのわかるよ」
「ん?」
「いいなー。羨ましい」
「そればっか」
ふっと頬を緩ませた俺に、二人分の冷たい視線が突き刺さる。
「マナ、勇気あるデスネ」
「は?」
「さっき言ったばかりなのに。ただの女好きという判断でいいですか?」
「いいわけねーだろ」
「そんなっ!違いますよっ!」
「そんな慌てなくていいよ、秋山さん」
スプーンで遊び始めた美緒の手を取りながら冷静にツッコんだ俺と、慌てて否定する秋山さん。ここで俺まで「愛里」と呼んでしまったら色々と不都合が起こりそうなので、取り敢えずそれは控えるとしよう。
「でもっ、佐野君っ」
「かーちゃんはヤキモチ妬きだからなー、美緒」
「とーちゃー」
首元に巻きつこうとする美緒をよしよしと宥め、「ごちそうさまでした」と手を合わせて席を立つ。
「さて…と。腹もいっぱいになったし、コーヒー飲んだら秋山さん送ってこうかな」
「えっ?いいよっ!一人で帰れるから!」
「一人じゃ危ねーから送るよ」
「いいよっ!悪いし…」
チラリと遠慮気味に聖奈に向けられる視線。それに気付かないほど、俺もレベッカもハルさんの言う「阿呆」ではない。
「さすがMEIJIの息子デスネ。フェミニスト」
「でも・・・」
「とゆーわけだから聖奈、coffee please」
「・・・はい」
不満げな聖奈をキッチンに押しやり、眠気を訴える美緒の背をトントンと叩きながら「でも…でも…」と聞き分けの悪い秋山さんの隣へと腰を下ろした。

