一家が勢揃いしているだろうと思っていたリビングは、意外とアッサリとしたもので。ソファにレベッカと秋山さんが座っているだけで、当然騒いでいるだろうと思っていた大人達の姿はなかった。
「おかえり、マナ」
「おかえりなさい、佐野君」
「おぉ。あれ?」
「ハルトとマリコは志保の店へ行ったデスヨ」
「は?」
「チサはそっち」
細い指がスッと和室へと向く。あのハルさんが、いくら子供達が居ると言えどちーちゃんを置いて行くはずがない。また冗談を…と半笑いになった俺に、腕の中の美緒がしゅんと眉尻を下げた。
「ちーねんねー」
「え?マジでいんの?」
「ハルトとbattleしてふて寝してるデスヨ」
「えー。雪でも降んじゃねーの、それ」
美緒を抱いたままスッと和室へ続く扉を横に引くと、大きなうさぎのぬいぐるみに抱きついて眠っているちーちゃんの姿があった。
「ただの夫婦喧嘩ですよ。放っておけばいいです」
「相変わらず辛辣だね、お前の口は」
「マナに言われたくありません」
「ん?俺はいつだって優しいよ。ちーちゃんには」
ずり落ちそうになっていた毛布をちーちゃんの肩まで引き上げると、ビクッと大きく体が揺れてバシンッと手が払われた。そして、震えながら小さくなる体。
「ちー…ちゃん?」
「…ともとぉ」
グスッと鼻を啜る音と共に出された言葉は、聞き慣れない名前だったように思う。
「ちーちゃんに毛布を掛けてはいけません」
「え?」
「ちーちゃんの毛布は、肩の下までです」
「風邪引くだろ」
「小さい頃からそう言われてます。そこにバスタオルがあるので、それを肩にかけてあげてください。あっ、はるが居ないので、電気は消さないでくださいね」
煌々と光る電気の下で身を縮めるちーちゃんは、いつもに増して頼りなくて。大きなうさぎをギュッと抱き締めて眠るその姿は、とても二児の母とは思えない。
「おかえり、マナ」
「おかえりなさい、佐野君」
「おぉ。あれ?」
「ハルトとマリコは志保の店へ行ったデスヨ」
「は?」
「チサはそっち」
細い指がスッと和室へと向く。あのハルさんが、いくら子供達が居ると言えどちーちゃんを置いて行くはずがない。また冗談を…と半笑いになった俺に、腕の中の美緒がしゅんと眉尻を下げた。
「ちーねんねー」
「え?マジでいんの?」
「ハルトとbattleしてふて寝してるデスヨ」
「えー。雪でも降んじゃねーの、それ」
美緒を抱いたままスッと和室へ続く扉を横に引くと、大きなうさぎのぬいぐるみに抱きついて眠っているちーちゃんの姿があった。
「ただの夫婦喧嘩ですよ。放っておけばいいです」
「相変わらず辛辣だね、お前の口は」
「マナに言われたくありません」
「ん?俺はいつだって優しいよ。ちーちゃんには」
ずり落ちそうになっていた毛布をちーちゃんの肩まで引き上げると、ビクッと大きく体が揺れてバシンッと手が払われた。そして、震えながら小さくなる体。
「ちー…ちゃん?」
「…ともとぉ」
グスッと鼻を啜る音と共に出された言葉は、聞き慣れない名前だったように思う。
「ちーちゃんに毛布を掛けてはいけません」
「え?」
「ちーちゃんの毛布は、肩の下までです」
「風邪引くだろ」
「小さい頃からそう言われてます。そこにバスタオルがあるので、それを肩にかけてあげてください。あっ、はるが居ないので、電気は消さないでくださいね」
煌々と光る電気の下で身を縮めるちーちゃんは、いつもに増して頼りなくて。大きなうさぎをギュッと抱き締めて眠るその姿は、とても二児の母とは思えない。

