「どうぞ」
「サンキュ」
「ありがとう、セナちゃん」
「セナー、ちさのは?」
「ちーちゃんはこっちです。飲めないものを淹れる必要はありません」
「むー。飲めなくてもいいやん」
どうやら皆とお揃いが良かったらしく、ちーちゃんはオレンジジュースの入ったグラスを見つめながら唇を尖らせた。
それを構おうとする俺にジトリと視線を向け、聖奈は大きく息を吐く。
「ちーちゃん、はるとけーちゃんのお手伝いをしてきたらどうですか?」
「え?なんで?」
「後で説明してあげますから、あっちに行っててください」
「イヤ!ちさも聞く!」
「遠慮してくださいと言ってるんです。話が進みません」
「めーしーはいいって言ったもん!はるぅ!」
「あー、はいはい」
もうそんなやり取りにすっかり手慣た感のあるハルさんは、ケイさんにその場を任せてキッチンへと入った。そして手を洗い、自分用のコーヒーを持ってエプロンを外しながらやって来る。
「セナ、千彩にそんな言い方すんな」
「話が長くなります」
「そんな手短に終わらせるような話でもないやろ」
「倍はかかるんですよ?時間の無駄です」
「千彩にかける時間は無駄とちゃう。変なとこで反抗すんなよ」
「もう…いいです。セナはけーちゃんのお手伝いをしてきます」
「はい、よろしくー」
そんな扱い方をするから捻くれるんだよ。と、出かかった言葉は、ちーちゃんの表情を見た途端引っ込んだ。
ハルさんに庇ってもらってご機嫌になるはずのちーちゃんは、どんより曇り顔で。それに気付いていないのか、ハルさんは長い黒髪を撫でながら呑気にコーヒーカップを傾けていた。
ツッコむべきか否か。
ここの家庭事情は何かと面倒くさいので、利口な俺は考えることをやめにした。
「公園行ってたんじゃなかったのかよ」
「行ってたよ」
「じゃあ何で今美緒は警察にいるんだか」
「俺はどうするの?とは尋ねたけど、賛成はしてないよ」
相変わらず、シレッと澄ました顔で腹の立つことを言ってくれる親だ。貼り付いたような笑顔が余計に腹立たしい。ついついギリッと奥歯を噛み締めてしまった俺を見て、ハルさんがふっと笑い声を漏らした。
「お前でもそんな顔するんやな」
「はい?」
「さすがの愛斗でもメーシーには勝てんか」
「腹立つんですよ、この人」
「俺もそんなこと思った頃もあったなー」
にししーとからかうように笑うハルさんは、どうやらこの事態を重要視してはいないらしい。
まさか…と眉根を寄せる俺に、今度はメーシーが笑い声を漏らす。
「サンキュ」
「ありがとう、セナちゃん」
「セナー、ちさのは?」
「ちーちゃんはこっちです。飲めないものを淹れる必要はありません」
「むー。飲めなくてもいいやん」
どうやら皆とお揃いが良かったらしく、ちーちゃんはオレンジジュースの入ったグラスを見つめながら唇を尖らせた。
それを構おうとする俺にジトリと視線を向け、聖奈は大きく息を吐く。
「ちーちゃん、はるとけーちゃんのお手伝いをしてきたらどうですか?」
「え?なんで?」
「後で説明してあげますから、あっちに行っててください」
「イヤ!ちさも聞く!」
「遠慮してくださいと言ってるんです。話が進みません」
「めーしーはいいって言ったもん!はるぅ!」
「あー、はいはい」
もうそんなやり取りにすっかり手慣た感のあるハルさんは、ケイさんにその場を任せてキッチンへと入った。そして手を洗い、自分用のコーヒーを持ってエプロンを外しながらやって来る。
「セナ、千彩にそんな言い方すんな」
「話が長くなります」
「そんな手短に終わらせるような話でもないやろ」
「倍はかかるんですよ?時間の無駄です」
「千彩にかける時間は無駄とちゃう。変なとこで反抗すんなよ」
「もう…いいです。セナはけーちゃんのお手伝いをしてきます」
「はい、よろしくー」
そんな扱い方をするから捻くれるんだよ。と、出かかった言葉は、ちーちゃんの表情を見た途端引っ込んだ。
ハルさんに庇ってもらってご機嫌になるはずのちーちゃんは、どんより曇り顔で。それに気付いていないのか、ハルさんは長い黒髪を撫でながら呑気にコーヒーカップを傾けていた。
ツッコむべきか否か。
ここの家庭事情は何かと面倒くさいので、利口な俺は考えることをやめにした。
「公園行ってたんじゃなかったのかよ」
「行ってたよ」
「じゃあ何で今美緒は警察にいるんだか」
「俺はどうするの?とは尋ねたけど、賛成はしてないよ」
相変わらず、シレッと澄ました顔で腹の立つことを言ってくれる親だ。貼り付いたような笑顔が余計に腹立たしい。ついついギリッと奥歯を噛み締めてしまった俺を見て、ハルさんがふっと笑い声を漏らした。
「お前でもそんな顔するんやな」
「はい?」
「さすがの愛斗でもメーシーには勝てんか」
「腹立つんですよ、この人」
「俺もそんなこと思った頃もあったなー」
にししーとからかうように笑うハルさんは、どうやらこの事態を重要視してはいないらしい。
まさか…と眉根を寄せる俺に、今度はメーシーが笑い声を漏らす。

