「さて。起きますか」
うぅんと背伸びをして立ち上がると、くしゃりと足に何かが引っ掛かる感覚があった。
「ん?あぁ…」
昨日美緒の髪を結えていたヒマワリが、無残にも俺の足の下でへちゃげていた。拾い上げてふと思い出す。今日は美緒を連れて警察に行くんだった、と。
「あ、起きた?おはよう」
「おー。おかえり。あれ?美緒は?」
「警察に引き渡してきたよ」
「おぉ。え?」
「聞こえなかった?警察に引き渡してきた」
ちょうど戻って来たメーシーが、リビングの扉を引きながらにっこりと笑った。
その笑顔に、急激に頭に血が上って行くのがわかる。俺もまだまだなんだと改めて思った瞬間。
「何でそんな勝手なことすんだよ!」
「俺は常識的なことをしたつもりだけど?」
「そんなこと言ってんじゃねーんだよ!何で美緒を独りにすんだよ!」
しまった!扉が完全に開いてしまってそう思ったのだけれど、そう簡単に落ち着きは取り戻せそうになかった。如何せん、俺はまだ血気盛んな10代なのだ。
「セナ、準備しろ。美緒連れ戻しに行くぞ」
「えっ?えっ?美緒ちゃんどこに行ったんですか?」
「警察だ。行くぞ」
「えっ?」
「待てよ」
顔も洗わずに飛び出そうとした俺の腕を、柔らかな手が掴む。苛立ちと共に振り返り、不安げに揺れる瞳にハッと息を呑んだ。
「マナ、何で怒ってるん?」
「いや、あの…」
「はる、美緒ちゃんは?」
「メーシーが警察に連れて行ったんやってよ」
「なんで?」
「さぁ。俺にはわからん」
ピザ生地を伸ばしながら、粉塗れにした両手を広げて肩を竦めるハルさん。それを真似るケイさんは、鼻先まで粉塗れだ。
何とも気の抜ける光景に、ふぅっと大きく息を吐いてちーちゃんの手を取って視線を合わせた。
「ごめん、ちーちゃん。怒鳴ったりして」
「あれ?それって俺に言うべきなんじゃねーの?」
「うっせーよ。澄ましてねーで説明しろ」
「めーしー、ちさにもわかるように説明してね?」
「んー。姫にそう言われちゃ説明しないわけにはいかないね」
ダイニングテーブルは、エプロン姿の男二人が陣取っている。必然的にソファに腰掛けることになった俺達は、聖奈がコーヒーを運んで来るのを待ちながら睨み合う。
まるで数十年後の鏡を見ているようだ。と、こんな時ほど遺伝子の強さにうんざりする時はない。
うぅんと背伸びをして立ち上がると、くしゃりと足に何かが引っ掛かる感覚があった。
「ん?あぁ…」
昨日美緒の髪を結えていたヒマワリが、無残にも俺の足の下でへちゃげていた。拾い上げてふと思い出す。今日は美緒を連れて警察に行くんだった、と。
「あ、起きた?おはよう」
「おー。おかえり。あれ?美緒は?」
「警察に引き渡してきたよ」
「おぉ。え?」
「聞こえなかった?警察に引き渡してきた」
ちょうど戻って来たメーシーが、リビングの扉を引きながらにっこりと笑った。
その笑顔に、急激に頭に血が上って行くのがわかる。俺もまだまだなんだと改めて思った瞬間。
「何でそんな勝手なことすんだよ!」
「俺は常識的なことをしたつもりだけど?」
「そんなこと言ってんじゃねーんだよ!何で美緒を独りにすんだよ!」
しまった!扉が完全に開いてしまってそう思ったのだけれど、そう簡単に落ち着きは取り戻せそうになかった。如何せん、俺はまだ血気盛んな10代なのだ。
「セナ、準備しろ。美緒連れ戻しに行くぞ」
「えっ?えっ?美緒ちゃんどこに行ったんですか?」
「警察だ。行くぞ」
「えっ?」
「待てよ」
顔も洗わずに飛び出そうとした俺の腕を、柔らかな手が掴む。苛立ちと共に振り返り、不安げに揺れる瞳にハッと息を呑んだ。
「マナ、何で怒ってるん?」
「いや、あの…」
「はる、美緒ちゃんは?」
「メーシーが警察に連れて行ったんやってよ」
「なんで?」
「さぁ。俺にはわからん」
ピザ生地を伸ばしながら、粉塗れにした両手を広げて肩を竦めるハルさん。それを真似るケイさんは、鼻先まで粉塗れだ。
何とも気の抜ける光景に、ふぅっと大きく息を吐いてちーちゃんの手を取って視線を合わせた。
「ごめん、ちーちゃん。怒鳴ったりして」
「あれ?それって俺に言うべきなんじゃねーの?」
「うっせーよ。澄ましてねーで説明しろ」
「めーしー、ちさにもわかるように説明してね?」
「んー。姫にそう言われちゃ説明しないわけにはいかないね」
ダイニングテーブルは、エプロン姿の男二人が陣取っている。必然的にソファに腰掛けることになった俺達は、聖奈がコーヒーを運んで来るのを待ちながら睨み合う。
まるで数十年後の鏡を見ているようだ。と、こんな時ほど遺伝子の強さにうんざりする時はない。

