「俺は、千彩を守りたいと思った。約束もした。だから、出会ってからずっとそうしてきたつもりでおる」
「はい」
「初めて…初めて、心の底から自分の手で幸せにしてやりたいと思った。こいつのためなら何を犠牲にしてもええって」
「そりゃ…素晴らしいことですね」

茶化すつもりは無いのだけれど、どうも俺はこの手の話が苦手で。愛だの恋だの、言葉にすれば軽くなってしまう感じがするのだ。

I love youは言えても、愛してるとは簡単には言えない。そんな捻くれ者だから。

「愛斗…お前さぁ、何でセナのこと抱く?」
「はい?」
「何で抱きたいと思う?」
「いや、steadyの父親にそれを言え、と?」
「たまには腹割れや」

何を考えてるんだ、この人は。

そう頭を抱えたくなるも、それを許してくれる人ではない。ケイさんとは違い、「あははー」で事を解決してしまう人ではないのだ。

「そうっすね…難し過ぎる質問なんですけど」
「ヤりたい盛りか?まだ10代やし」
「別に…そんなことないですけどね。シなきゃシないでいいですけど。強請ってくるのはアイツなんで」
「俺はそれに応えとるだけや、と?」
「まぁ…そればかりだとは言えませんね。わざとそうさせてる部分も多々あるんで」
「もー。ややこしい奴やな。サッと言えや、サッと。メーシーかお前は」

親子なんでね。と笑うと、冷たい視線が突き刺さる。

まぁ、聖奈に問い詰められるよりはマシだ。そう諦めることにして、温くなりかけたコーヒーを喉の奥に流し込んだ。

「独占欲、支配欲…その他諸々。そんな感じですかね。絶対に俺だけを見てるってゆうあの瞬間が好きなんです」
「相変わらずひん曲った男やなぁ」
「よく言われます。ハルさんはどうなんですか?」
「俺はなぁ…」

うーん…と言葉を選びながら、ハルさんはサイドボードの引き出しへ手を伸ばしてシガレットケースを取り出した。

すかさずそこから一本拝借して銜えた俺を見て、ハルさんの目は丸くなった。

「黙っててくださいよ?」
「へぇ…」
「聖奈も知らないんすから」
「火は?」
「要らないっす。臭いつくんで」
「カッコだけかい」

あぁ、ここは日本なんだな。と、こうゆう時に改めて思う。きっとうちの両親なら、すぐさま俺の身体検査を始めることだろう。

日本では考えられないかもしれないけれど、俺の年齢なら酒やタバコは知っていてもおかしい話ではないし、それ以上のことだって知っている奴らは山ほどいる。