【未桜side】



こう、毎日と言っていいほど説教をされると


流石に嫌になってきてしまう。


私だって月宮の一人娘である以前に


一人の若い娘なのだから


勝手に出かけるくらい、許してくれたっていいじゃない。


勉強も、和歌も、習字も人並み以上にはできるのに。


そんなことを思いながら

菊乃さんが出て行ったほうにむかって舌を出す。

その様子を見ていた湖が呆れたように口を開いた




「未桜様、説教されることをしている貴方がわるいのですよ?」


湖、貴方まで・・・


でも、言われていることは確かだから何も言い返せず

ただしょんぼりとした表情を浮かべる。


「脱走はかまいませんが、私には言って下さい」

「私は貴方の意をくんで、脱走のお手伝いをしてさしあげているというのに・・・」

「余計な心配を、させないでください・・・」


でも、と反論しようとしても

すぐに次の言葉を言われ遮られてしまう。


そのうえ、この内容である。


うるうると目を潤ませ、友と言ってくれたのは嘘だったのですか

と付け足してくる。


演技や、言いくるめるための言葉だとわかってはいても

どうしても言い返せない。


言いくるめる事と饒舌に関しては

湖に勝るものを、私は見たことがない。


「・・・以後、気を付けるわ」

「わかっていただければいのです」


目を伏せてそう言うと、勝ち誇ったような笑みを浮かべるのだ。



「ところで湖、今日は美雨じゃないのね」

「はい、美雨は稽古をつけてもらいに言っています」

「そう・・・」


美雨(ミウ)は湖とそっくりな双子の弟。


名前のとおり、可愛らしい女の子という印象を受ける人も少なくないだろう。


本当は男の人は付き人をやってはいけないのだけど

湖のふりをして、交代で私の付き人をやってくれている。


今日は美雨の日だったはずだが、なるほど。


稽古か・・・美雨もやっぱり男の子なんだなぁ。


あの可愛らしい美雨が竹刀を振っている所を想像するだけで

自然と顔がほころぶ


「似あわないと思っているのでしょう?美雨に怒られますよ」

心を読まれてしまった


「わかっているわ、勝手に人の心を読まないで頂戴」