はらり、と

月の光を浴びながら

舞い散る桜をみていると

あいつを思い出す。


弱く

儚いその命を

美しいと思えた。

生きることを望み

必死に希望を掴みとろうとする姿を

守りたいと思えたんだ。


生きる希望など

何処にもなかった。

欲しいとすら思わなかった。

ただただ

苦しさにもがき

憎しみのまま人を殺していた俺の

唯一の光。


あいつは俺の事を

大切といってくれたんだ。


話を聞かせよう。

人を愛してしまった

馬鹿な鬼と

そんな鬼の愛を受け入れた

馬鹿な人間の話を。