「言っていると思っていた。 別れへのタイムリミットも、連絡の手段だって、お互いに知っていると思っていたんだが…」 ――知らない。 俺は、何一つ知らなかった。 いや、知ろうともしなかった。 詩乃の病気のことも。 詩乃の気持ちも。 自分の詩乃への気持ちさえ。 怖くて、怖くて。 逃げたくて。 知ろうともしなかった。 そうだ、何で気づかなかったんだ。 こんなに…。 こんなに、好きだったのに…。