* * * * * あれは俺が高校二年生に上がる春休みのことだった。 毎日暇で、部屋でひたすら時間を消化する俺を、親父は外へ引きずり出したかったのかも知れない。 「家に置き忘れた書類を持って来てほしい」と半ば強引にお願いされ、柔らかい日差しの中、バスにしばし揺られて、滅多に行かない病院へと向かった。 俺の親父は医者で、この小さな田舎では一番大きな病院の医院長だった。