side優心


能力がなくなったと分った瞬間、嬉しくてたまらなかった。
それと同時に、雫に早く伝えたいと思った。

外からは、雨が降り出していた。

俺は走って、家へ向かう。
石段を上ってすぐに、家を出た雫を見つけた。
俺は雫を抱き締め、能力がなくなったことを言う。
雫は、とても喜んでくれた。

「優心、本当…よかった」

雫の瞳から、涙が流れるのがわかった。

「ありがとう、雫……」


その後、雫はお母さんから連絡があったと言って、帰っていった。

* * * 
どうして。
どうして、気付けなかったんだろう。

なぁ、雫。
お前の涙は、とてもとても……
綺麗だったよ。

気づいた時には、遅かった。

お前の優しさに気付けなかった俺は、

なんて、愚かなんだろう。