一億よりも、一秒よりも。

下着だけの姿で、ソファに腰を下ろした。拭いていなかった汗が、生地に染み込む。
立ち昇る、性の匂い。彼女の香水。
 
オーディオは静かに歌っていた。ビートルズ、ハード・デイズ・ナイト。
 
その声を身体に受けながら、ゆっくりと発泡水を喉に流し込む。
 
身体を、冷たい水が支配していった。

 
始まりがあるものなら、終わりもいつかくるものだとずっと思っていた。生まれれば死ぬのは絶対だ。
その終わりの形には色々あるだろう。
生涯ずっと連れ合って、墓の中でも一緒だとしても、やはり死をどちらかが迎えれば、形式上、終わりと捉えても間違いではない。
 
恋に落ちた瞬間。それが始まりだとしたら、自分はとても勿体ないことをしたのかもしれない。