一億よりも、一秒よりも。

それでも俺は、少なからずショックを受けていた。
 
いつもの粘度、いつもの湿度。
彼女の唇はためらいなく終わりを告げる。
その瞳が揺らぐことなく、その眉が動くことなく。

キョウはいつだってそうだった。
何を言うときも同じ態度。ベッドの中ですら、何も変わらなかった。
 
 
だけど今は違う。そう思いたい。
彼女のドライさは消え、目尻から涙が零れている。

その瞳は俺を責めているようで、哀れに思っているようにも見えた。
 

彼女の身体から、グレープフルーツの香りが立ち昇る。あの日買った、新しい、香水。