一億よりも、一秒よりも。

「シノは?」
 
その代わり誘ってくるのがこの同僚だ。

「いい。今作業切りたくない」
 
社交辞令なのか純粋なのかは疑ったことがない。それをするだけ無駄だ。
入社してからずっと隣にいる奴。それでいい。

「ん、そっか。じゃー何か帰りに買ってきてやるよ」
 
それが向こうにも伝わってるのかもしれない。
同僚は俺に対してはドライで、何があっても気にしなかった。
それこそ、小言を言われたのは入社直後ぐらいだった。


「シノ」
 
感謝の意を告げると、夏木は上着を取って立ち上がった。そのまま行くと思いきや自分のモニタを軽く小突く。