信じる


クリスマス当日。
今日は土曜日で
学校もお休み。

まぶたが重い。
きっと目が
腫れているのだろう。
また涙が出る。

“さよなら”も
“ありがとう”も
言えなかった。

重たい体を起こす。
涙を拭いて
洗面所に向かう。
鏡の前で
首もとの何かに気づく。

杏里:(…いつの間につけられたんだろ。)

誰のモノでもない、
俺のモノだっていう証。

杏里:(ダメだ、また泣いちゃう…。)

顔を洗って
台所へ向かう。
ご飯を食べて
自分の部屋に戻る。
その間に
何度も泣きそうになった。
失恋って、
こういうことを言うのかな。

部屋の中に居ても
幸樹を思い出して
泣きたくなる。

杏里:(どこか行こう…)

歩いてる時も
電車に乗ってる時も
なにをしてても
急に涙が込み上げてくる。

無意識にたどり着いた場所は
津田沼の公園だった。
ベンチに座って
膝を抱え込む。
顔を伏せて

泣いた。


ここでの思い出を
何度もリピートさせた。

もっと優しくすればよかった。
ずっと傍にいたかった。
沢山話したかった。
抱き締めてほしい。
あの声で名前を呼んでほしい。
手を握ってほしい。
キスをしてほしい。
もう一度「好き」って
言ってほしい…。

杏里:「幸樹…会いたい、会いたいよぅ…」

涙でくしゃくしゃな顔。

空は、暗くなり始めていた。


頭に冷たいものを感じた。
顔を上げると
白い小さい雪が降っていた。

杏里:(今年はホワイトクリスマスなんだっけ…)

まわりを見渡すと
カップルが増えていた。

いきなり放送が流れる。

「merryX'mas。ただいまより1時間程、クリスマスソングが流れます。どうぞお楽しみください。」

杏里:(あぁ、そうか。そう言えばジンクスがあったんだっけ…それで幸樹をここに呼びたかったんだ。)

止まらない涙。

苦しい。

本当はここで、
幸樹とキスがしたかった。

まわりのカップルは
見せつけるかのように
甘いキスをしている。

ウチだけだ、
場違いなのは。

そんなことを思っていたら、
いきなり着信音が鳴った。