信じる


幸樹:「なんで泣いてんの?」

杏里:「え…?」

幸樹:「さっきから鼻すすってるから…泣いてんでしょ?」

杏里:「…。」

幸樹:「黙ってたってわかんないよ?」

杏里:「なんか…幸樹のこと、信じれなくて…」

…言った。

幸樹:「…なんで?」

杏里:「…。」

微かにため息が聞こえた。

少し間があいて
幸樹が喋りだす。

幸樹:「じゃぁ、もう…別れるしかないじゃん…。」

…幸樹、
泣いてるの?

杏里:「…え」

幸樹:「…たった、1ヶ月だったけど」

杏里:「待って、ウチはっ」

幸樹:「杏里と付き合えて」

杏里:「幸樹、ウチ」

幸樹:「最後なんだからちゃんと聞け……聞いて、杏里。」

幸樹には見えないけど
首を大きく横に振る。

杏里:「ウチ別れたいなんて言ってな」

幸樹:「付き合ってくれてありがとう。」

杏里:「こう、き…」

泣きたくないのに
涙が止まらない。

幸樹:「幸せだった。」

杏里:「待って幸樹、ウチ…」

電話が切れる。

携帯が手から滑り落ちる。

杏里:「…違う、こんなの望んでない。」

あれ?
なんでウチは、
泣いてるの?
なにが悲しいの?
“不良”はそんなに
好きじゃなかったのに
どうして?

あぁ、そうか。
いつの間にか
幸樹のことが
こんなに好きになってたのか。

そんな大切なこと、
今さら気づくなんて…

杏里:「幸樹ぃ…」

床に膝をつく。

杏里:「違う。…別れたいなんて思ってない。好きだよ、大好きだよ、ちゃんと愛してるよ…ねぇ、返事して…」

流れる涙は
何度拭いても止まらない。

杏里:(あんなこと言わなきゃよかった…)

その日、
ウチはひたすら泣き続けた。