社長と秘密の生活



「んっ……ぅっん………」


右手で目元を抑えながら、ゆっくり目覚めた杏花。

俺は左手を優しく握りながら、


「杏花、分かるか?」


そっと、顔を覗き込んだ。


「あっ!?要!!」


杏花は勢いよく起き上がり、俺に抱きついて来た。


「かな…め……要……要」


俺の名を何度も呼ぶ杏花。

そんな彼女を俺は黙ったまま、

優しく優しく抱きしめた。


「かなめっ……要、要……要…」


杏花は俺の腕の中で、

何度も何度も俺の名を呼び続ける。


俺は右手で頭を優しく撫で、

左手で背中を強く抱き寄せた。


『安心していいよ、俺はここにいる』

そう、伝えたくて……。