「・・・痛っ・・・」

ボーっとしていたら、包丁で指を切ってしまった。

指の切れたところから血がダラダラと流れてくる。

その流れてきた血はポタポタと床に落ちる。

「大丈夫?えっと・・・どうしよっ・・・」

晴菜は洗面所に行き、とりあえず血を流した。

少しの痛みは感じるが、悠矢の拳で顔を殴られた時に比べたら、痛くないに等しいものだった。

「晴菜・・・大丈夫?」

鏡を見ると、晴菜の後ろに映っている、心配そうな悠矢の顔。

晴菜ってば最低。

こんなに心配してくれる人を少しでも悪く思っちゃうなんて。

「血、止まった?」

「うん。もう大丈夫!」

「こっち来て。絆創膏貼ってあげるっ!」

そういう悠矢にとぼとぼついて行く。

「座って?」

「絆創膏貼るだけだから自分で貼れるよ?」

「俺が貼りたいの!」

そう強い目線で言われたので、断るのも悪いなぁと思い悠矢に貼ってもらうことにした。

悠矢は消毒液の付いたティッシュを傷口に優しく当てた。

「消毒までするの?」

「だって、バイキンが入ったら大変!」

そう言う悠矢はなんとなくお母さんのようで可愛いかった。