永遠の愛

「センセ?」


不意に聞こえた声。

ハッと我に返ると目の前に天野さんの顔があった。


「あ、ごめ…」

「どうかしました?」

「ううん。…私の高校時代は普通。とくに何もなかったよ」

「何それー、勿体ないじゃん」

「…だよね。天野さんは今、楽しい?」


そう言った私に天野さんは悲しく笑った。


「楽しいとは言えない。名簿見れば分かるでしょ?私はお母さんしか居ない。だけど、あんなの親じゃない」

「…親じゃないって?」

「借金まみれの親。夜の仕事してんのにその金は自分自身の為。返済額は私に回るし…だから昼バイトしてる。お金必要だから」

「だから定時制?」

「そう。人生なんて楽しくないよ。私の生きてる意味が分かんないの」

「……」


ごめん。なんて言ったらいいのか分かんない。


“人生なんて楽しくないよ”


だって、それ。私が言ってた言葉だから。


“お金必要だから”


だって、それ。私が言ってた口癖だから。


私と同じ人生を歩んでる子がいる。

そう思うと、思うだけで胸がギュ―っと苦しくなって切なくなった。