「あ、あのさ。一条くんってもしかしてサボリ魔?」
そう言った私に天野さんはクスクス笑った。
「そう奏斗はサボリ魔。進級する時も危なかったんだから。定時で留年ってどうなの?って感じだけど。んー…でももうそれもないと思うよ?」
「ないと思うって?」
「だって美咲センセーが居るもん」
「えっと…意味分かんないんだけど」
あまりの意味のわからなさに、私は首を傾げる。
「奏斗は年上好きだから。それに綺麗な人には目がないの」
天野さんはまたクスクス笑った。
「んー…なんて言ったらいいか分かんない」
「けど凄い事だよ?新学期に入ってまともに来た事なんて今までなかったから。だから美咲センセーのお陰」
「よく分かんない。でも、一条くんって遊んでそうだもんね」
「奏斗はモテるから。だからほら、隣の校舎って全日制でしょ?だから奏斗を見る為によく女の子達は来てる」
「へぇー…人気なんだね」
「あー…でも昔はヒドイくらいの遊び魔。でも今は違うんだ…彼女を想ってるから」
「……」
「でも、もういないけど」
ポツリと小さな小さな声で呟かれた言葉に私は思わず顔を上げた。
「あ、ううん。なんでもない、なんでもない。ねぇ、それよりセンセーってさ高校時代どんな風に過ごしてた?楽しかった?」
逸らされた話は、以外にも苦痛な話だった。
私の高校時代?
そんなの、言える訳ないじゃん。
人が嫌いだった。
自分の空間に人は寄せつけたくなかった。
私は私で人の意見なんて聞きたくなかった。
お金が必要で援助交際してました。
…なんて言える訳がない。



