「…美咲センセ?」
今から帰宅しようと思ったその時。
不意に聞こえた可愛らしい声に私は振り返る。
「あ、天野さん?」
ほんっとギャルだな。
…懐かしい気もするけど。
「センセ、今から帰るの?」
「そうだけど。え?天野さん、帰らないの?」
「もちろん帰るよ」
そう言った天野さんは笑ったけど、私にはそんな風には見えなかった。
なぜか寂しそうな笑い。
その奥に潜んでる寂しそうな心が私は気になって仕方がなかった。
「電車?」
「うん。センセーは?」
「電車」
「じゃ、駅まで行こうよ」
「うん」
暗い夜道を私と天野さんはゆっくりと足を進ませる。
「あ、そうだ。センセーの美容法教えてよ?」
「え?美容法って何?」
「だってなんもしてないのにそんなに綺麗になれるわけないでしょ?なんか特別な事してるのかなーって思って」
天野さんはニコっと微笑んで私の顔を覗き込んだ。
「美容法…っつっても私、何もやってないんだけど」
「え!?そんな事ないでしょ?何もやってなかったら産まれつき美人じゃん。女はさ、綺麗にするから綺麗になっていくの。なのにセンセー何もしてないの?」
「うん、してないなぁー…簡単にスキンケア程度?」
「うっそーマジで!?」
天野さんは何がどう驚くべきな所か分かんないけど、声を大きく上げた。



