「おはようございます」
次の日、教壇に立った私はそう生徒の前で声を掛ける。
もう日が落ち始めているのに。
なのに、おはようございますって…
そんな事を思いながら出席簿を開いた。
次々読んでいく名前。それに皆必ず返事を返してくれる。
だからこーゆーのってやっぱ先生なんだって改めて思う。
「えー…っとあれ?一条くんは?」
ポツンと空いた窓側の席。
皆も視線を送るも誰も何も返してはくれない。
「えっと…天野さん?」
相変わらずネイルに夢中な天野さんに私は声を掛けた。
天野さんはゆっくりと私に視線を向け、コクンと首を傾げる。
「一条くん…知らない?」
唯一、よく話してる天野さん。
「さぁ…寝てるんじゃないんですか?」
「…寝てる?」
だって、まだ17時半だよ?って、いや、もう17時か?
なんでこんな中途半端な時間に。
「多分ね。仕事、忙しいんでしょ?」
「…そう、なんだ。ありがとう」
…仕事。
美容師の?
なんか、よく分かんないけどその日は一条くんは姿を現さなかった。



