「お前さ、今、俺の事見掛けによらずとか思っただろ」
「え、あっ…」
つかさず聞かれた言葉に思わず曖昧な呟きをしてしまった。
どうして見破られたんだって言う驚きを紛らわそうと、ニコっと私は微笑んだ。
「つか、マジか」
翔は一瞬顔を顰め、咥えていたタバコを灰皿に押し潰す。
「さて、寝よっか。あ、そうだ。明日ママの方に帰るから」
立ち上がると同時に教材を閉じ、私は寝室へと向かう。
「おい、話し逸らすなよ」
クスクス笑う私の背後から翔のため息交じりの声が聞こえた。
寝室に入ったと同時にクーラーのヒヤッとした感覚が肌に伝わる。
大きなベッドに寝転がって、私は肌布団を身体に巻き付けた。
何もかもが不思議だった。
こうやって毎日夜に翔と話す事。
たわむれる事。
以前になかった事が今、訪れていて不思議な気分だった。
求めたいものは求めて、
今の大切な日々を過ごしたいって、
そう思った。



