「留学までしてこんなに頑張ってんのに、もしかしたら翔の方が頭いいかも」
「それはねーな。だって、この文から既に読めねぇしっつーか略せねぇよ」
「でも、人間って不思議だよね…」
ソファーに深く背をつけた私は深くため息をつく。
「つか、急にどした?」
翔は不思議そうにタバコを咥えたままそう言って、両手で教材をペラペラと捲ってた。
「聞いてなくても寝てても頭のいい人いるから人間って不思議だよ」
「どこかで努力してんだよ」
「そうには見えないけど」
だって、あの一条くん、絶対勉強なんてしてない。
「んじゃ、例えば俺の話。俺って高校行ってねーじゃん?」
「うん」
「行ったって言ってっも数ヶ月。でもその期間サボってばっか。なのに何で俺、英語読めてんの?」
「え?それは勉強したからじゃん」
「ほら、勉強してんじゃん。だからどこかで頑張ってんだよ」
吸いこんで吐き出した翔はビール缶をを掴み、ゴクゴクと喉に流し込む。
「あぁ、そっか…」
「教科書開けてなくてもボーっとしてても耳には入ってんだよ。あとは努力と才能」
「うーん…」
そう言われてみればそうかも知れない。
翔って頭よさそうっていうイメージないもんな。
ってこんな事言ったら怒られちゃうけど…
だから思わず苦笑いを漏らしてしまった。



