「バイクで来てんの?」
「そう。電車ダルイから」
「そっか…」
何故か上手く一条くんを見る事が出来なかった。
さっき聞いたばかりの今は、正直面と向かって話せない。
だから少しの間、言葉なんて出せなかった。
でも、そんな沈黙を破ったのは一条くんだった。
「俺の事でそんな考えんなよ」
フッと笑った一条くんはカチャンとジッポの蓋を開け、咥えていたタバコに火を点けた。
「え?…何で?」
「俺の事、話してただろ?」
「……」
その言葉にドクンと心臓が高鳴った。
「補習のプリント持って行ったら美咲ちゃん、俺の事聞いてた」
「…ご、ごめんっ、」
そう言って咄嗟に目を瞑った私に一条くんの微かな笑いが聞こえる。
「何で謝んの?」
「だって聞いちゃいけない事聞いた」
少しずつ目を開けて一条くんを身構えると、一条くんは至って普通だった。
「別に隠してもねぇしな。それにいつかは知る事になんだろ?」
「そう…だけど」
そう…だけど。
知ったのが早すぎたのかもしれない。
だって、知った事によってなんか見過ごす事が出来ないと思った。
…だって翔と似てるんだもん。



