皆が帰って行く放課後。
もう22時になろうとしている。
“先生さよなら”
そう言って帰って行く生徒達。
だけど私はその言葉に慣れてない。
「…大丈夫かな、私」
思わずため息とともに零れ落ちる言葉。
職員室に戻り、私はデスクの引き出しをスッと手前にスライドさせる。
そこから出て来たのはファイル。
そのファイルを机の上に置き、私はペラペラと捲った。
クラスの名簿。
名前、住所、電話番号、…家族構成。
今更だけどまだ詳しくなんて見てなかった。
とりあえず名前は覚えようと、それだけしか思っていなかった。
ペラペラと捲って私の手は止まる。
「…え?」
思わず漏らした言葉と同時にそれ以上の言葉を私は失った。
見つめる先に書かれているのは一条くんの名前。
だけど。
家族構成の欄に、雑で書かれている“いねーよ”と言う文字に手が止まった。
「…いない?」
どう言う事?



