「諒ちゃん、私が行くって事知ってんの?」
「うん、知ってる」
「何か言ってた?」
「ふーん…って言ってた」
「えっ、それだけ?」
「うん。それだけ」
そう言った葵は苦笑いをし、思わず私もつられて苦笑いをした。
「ま、諒ちゃんらしいけど。まだ帰ってないよね?」
「うん、まだ。20時とかそのくらいじゃないかな」
「ふーん…ってか、やっぱ諒ちゃんが働く姿なんて想像できないよ」
「美咲からしたらそう思うよね」
「そうだよ。怒るばっかだったのに。ってかさ、諒ちゃんって香恋ちゃんに怒るの?」
「ううん。まったく」
首を振った葵は呆れたように呟く。
「まぁ、でも可愛いから怒れないんだよ」
「さぁ…どうなんだろ」
薄ら笑った葵の顔は本当にママの顔になってた。
想像すらつかなかった今の現実。
月日はホントに刻々と過ぎていってるんだなって改めて思う。
あの頃の私達なんて、もうどこにも居ないのかも知れない。



