「ねぇ、ここからだと掴めそうじゃない?」


夜空から視線を翔に向けると、タバコを咥えたままの翔が首を傾げる。


「何が?」

「星だよ、星」


そう言った私に翔はタバコを口から離し、夜空を見上げる。


「…いや、それはねぇな」


フッと苦笑いした翔は私に視線を移しもう一度タバコを咥えた。


「だーから、そんな感じだよねって話しだよ」

「あー…そうなのかな」

「なんか、どうでもよさそうだね」

「って言うか、たまにそう言うロマンチックっぽくなる美咲に驚く」

「どー言う事よ、それ!」

「そう言う事」


クスクス笑みを漏らす翔に少しだけ眉を寄せる。


「私も一応女だからね」

「そうですね。つか、置いてくぞ」


クッと口角を上げた翔は先に足を進めて行く。

その後を追って車に近づくと、翔は手に持っていたタバコを車内に備え付けてある灰皿に押し潰した。


「何処か行くの?」


シートに深く背をつけた私は運転席に居る翔に視線を向ける。


「いや…」


そう言った翔に得に何も思わずにいたけれど、見馴れてくるその風景に私は息を飲んだ。