「…お母さん、優しかった?」
「うーん…分かんねぇ」
翔は情けなく笑う。
「…分かんない?」
「ほら、俺…あんま当時の記憶ねぇんだわ。家にも帰らず悪ばっかしててさ、金ばっか取って、何一ついい事した記憶がねぇの」
「……」
「でも、そんな俺に対して何も言ってこなかったから優しかったのかな」
「……」
「きっとまだ恨んでるかも知れねぇな。今はもう、ゴメンって言葉しか言えねぇけど…」
相当に弱い私の涙腺。
翔の言葉だけで目が潤む。
「そんな事ないと思う」
「……」
ふと、言った私の言葉に翔は私に視線を送る。
「…そんな事、ないと思う。ほら翔、言ったじゃん。親は子供を責めたりしないって。だから…だからきっと恨んでなんかないよ?」
「だと、いいけどな」
後になってみないと分からない感情が芽生えるけど、そんな切なさそうに笑う翔の隣にずっと居たいと、そう思った。



