少しだけ車を停められる場所があって、そこに車を停める。
翔は向かう途中、水道の所に置かれた手桶に水を注ぐ。
その手桶を持った翔の後を、私は線香と花を抱えて着いて行った。
ジャリジャリと石を踏む音が耳に入り込む。
ずらっと並んだ墓にはお盆を過ぎたからだろうか、花が供えられていた。
「ここ」
そう言って翔が足を止めた場所。
墓石には“芹沢家”って書かれてある。
そのお墓には真新しい花が飾ってあった。
「誰か来てるみたいだね」
お母さんのお墓にある花を見つめながら私は口を開く。
「あぁ。多分、お袋のツレ」
「そうなんだ」
「今でも俺の事心配してくれてんの。…また会わせる」
「うん」
翔は墓石に乗っている落ち葉を手で払うと、
「ずっと来てなくてゴメン」
そう言って、墓石を何度も擦った。
それだけで目が潤んできた。
見た事も、会った事もない翔のお母さんに瞳が潤んでしまった。
墓に水をかける翔を見ながら私は抱えていた花を包装紙から取り出す。
その花を翔と私で供え、翔が取り出したライターで線香に火を点け、線香立てに置いた。
何度もゴメンなって言う翔の声を聞きながら、私は真っ直ぐに伸びて行く煙をずっと眺めてた。



