…――――


「…寒くねぇの?」


このまま眠りに落ちようとした時だった。

不意に聞こえたその声。


その声の所為で今まで固まっていた身体が秘かに動く。

ゆっくりとゆっくりと視線を上げて見上げる先――…


「……っ、」


思わず声を失った挙句、息が止まりそうな感覚に襲われた。


「探した」


深く被ったパーカーの帽子の隙間から微かに見えるそのシルエット。

ジーンズのポケットに両手を突っ込んで、真っ直ぐ海に目を向けているのは誰がどう見ても、




……翔だった。




「な、なんで…」


思わず口を開くあたしに、翔はため息を吐き捨て隣に腰を下ろす。


「なんでって、それは美咲じゃん。…何してんの?何でこんな所にいんだよ」

「……」


その言葉に再びあたしは膝に顔を埋める。

ギュッと膝を抱え込む両腕。


その腕が秘かに震えたのが自分にでも分かった。