目の前で自分が乗っているであろう飛行機を見送ってしまった。

今から離陸していく飛行機を見送ってしまった。


まだこれから旅立とうとする人達でごった返す搭乗口のロビー。

ガラス張りから外を眺めながら私は鞄からスマホを取り出した。


掛けなきゃいけない。

勝手な事をしてしまった私を許してくれないだろうと、そう思い、私はスマホを耳にあてた。


「…あれ?美咲ちゃん?」


電話口から聞こえてくるのは菜緒の声。


「…菜緒?」

「え、どうしたの?もう飛行機に――…」

「ごめん、菜緒!!ごめん、ごめん、菜緒…ホントに――…」

「ちょ、ちょっと落ち着いてよ、美咲ちゃん」

「ごめん、菜緒。私――…」

「そっか…」


菜緒の聞こえて来た声は思ってたほど焦りはしてなかった。


「…菜緒?」

「美咲ちゃんはきっと、そうするだろうなって思ってた」

「え?」

「初めから分ってたよ。美咲ちゃんは来ないって事」

「…菜緒?」

「ごめんねぇ…私がこんな話持ち出したばかりに戸惑う事させて」


そう言った菜緒の薄ら笑った声が電話口から洩れた。