「はい?」
「…すみません。行けないです」
「え?」
「ごめんなさい。本当にすみません。行けないです」
「えーっと…行けないと言うのはご乗車されないと言う事でよろしいでしょうか?」
「はい」
「いいんですか?後からでは無効となりますけど」
「はい」
「飛行機にスーツケースなどは?」
「いえ、ないです」
「えーっと、ではお客様が本当に宜しければキャンセルの手続きを――…」
「すみません…」
深く頭を下げる私の目の前でゲートが閉まる。
こうした事にもどうしてか分んなかった。
もう勝手に足が向かって、勝手に口がそう言ってた。
気づけばそう口から吐き出していた。
こんな所で。こんな所まで来て気持ちが曖昧になるなんて自分にでも馬鹿過ぎて呆れてしまう。
なんでこんな行動をとってしまったんだろうって今更思ったっても仕方がない。
目の前で閉まってしまった限り、もう乗れないと言う事。
勝手すぎるのにも程があり過ぎる。
だけど、どうしても行けなかった…



