ピンポンパーン…
「お客様にご連絡致します。…925便、20時25分発ブリスベン行きの新山様。新山美咲様、出発の時間が迫っておりますので搭乗口まで――…」
暫く佇んでしまった私の耳に入って来るのは私を呼ぶアナウンス。
後、数メートル先を歩けば搭乗口。
その付近には係の人達が私を探しているのか目を配っているのが分かる。
早く行かなくちゃ皆に迷惑を掛けているって事も分るんだけど、何故か進めない。
「…―――新山さま…新山美咲さま――…」
次第に耳に張り付いて来るその声にハッとする。
そしてさっきよりも潤んでしまった瞳のまま、私は急いで搭乗口へと駆け寄った。
「あ、新山様ですか?」
「…はい」
「20分前になるのでゲートを締めさせて頂きますのでご乗車のほう宜しくお願い致します」
そう言ってチケットを受け取ろうとする係の女の人に、
「あのっ、」
私は声を振り絞った。



