おめでとう。って言う事も出来なかった。

いや、言う事は出来るんだけど今の私はそれが出来ないだけ。


そんなよく分らない感情を抑えようと軽く息を吐き捨てる。


夜の便で旅立とうとする人混みの中、ボストンバックを抱えて搭乗口のガラス張りから外を眺めた。


ズラっと横一面に並ぶ飛行機。

これから旅立って行く飛行機を見てから辺りを見渡した。


離陸するにあたって次々と飛行機の中へと身を収めて行く人達。

もう時間が本当に迫っていて、今まさにピークであろう行列。


なのに、なのに私の足は動こうとはしなかった。


何でか分んない。

そんなの自分にでもなんでか分んないけど足が全く進んではくれなかった。


次第にチケットを持つ手が微かに震えるとともにじんわりと熱くなってくる涙腺。

このままじゃ涙が落ちそうって言う感覚のまま暫く私は立ちすくんでいた。


早く行かなきゃいけないのにって分っていても足が進まないんじゃどうしようもない。


もうここまで来てんのに。

もう目の前まで来てんのに…