翔が置いて行った鍵。
その鍵をどうしようか考えた挙句、結局はテーブルの上に置いたまま私は家を出た。
空港に向かうその時間、なんでか分んないけど気持ちがハラハラとしてた。
楽しみとかワクワクとか、またあの場所に戻るんだって言う昔みたいな感情は正直言ってあまり湧いてはこない。
だからと言って間違ってる選択だとは思わなかった。
空港に着いて直ぐに出発ロビーで手続きを済ませ、飛行機に乗るまでの時間をカフェで過ごしてた。
そしてふと気になったそれ。
テーブルの端のほうに置いていた飛行機のチケット。
そのある一点に私の視線が止まった。
「…今日って、」
何も考えてはなかった。
得に意識なんてしてなかった。
今日は4月7日。
翔の誕生日だった。
去年はバタバタしてて電話する暇もなくて、その前は元気?って、確かそんな会話をしてた。
そして何年か前の誕生日は“会いたい”って、翔が私にそう言った。
”会いたい”って、“今から行こうかな”って、そう言ってきたその誕生日は翔が入院してる時だった。
全然知らなくて、翔が苦しんでる間、私はいったい何してたんだろうか。
そして、今も何をしてるんだろう。



