「…葵?」
「……」
「ねぇ、葵?」
「…うん?」
私の直感だった。
長年居たからこそ分かる私の直感だったかも知れない。
「…泣いてんの、葵?」
泣き声なんて聞こえないけど、少しだけ啜り泣いてそうな息使い。
電話口から聞こえるのは何度か聞こえてくる葵のため息。
だから、直感的にそう思ってしまった。
「…泣いてないよ、寂しいだけ」
なのに葵はそう言って微かな笑い声を漏らした。
電話じゃ分んない。
表情とか顔色とか態度とかなんて全然分かんない。
泣いてても違うよって言えば、それはそれで終わり。
「そっか…」
なのに私は曖昧な返事しか出来なかった。
ここで何かを言っちゃったら会話すら成り立たなくなりそうで、訳分かんない言いわけになっちゃうかも…って、そう思ったから何も言えなかった。
それはきっと葵も同じなんだと、そう思った。



