そこにどれくらい佇んでいたのかも分らないくらいの時間を過ごし、ただ宛のない場所を彷徨ってた。
そんな何気ない日々が刻々と過ぎていき気づけば出発寸前の前の日だった。
何も考えずに寝つこうとしてた。
布団に入って目を閉じて眠りに落ちれば何もかも考えなくて済むって思って、キツクキツク目を必死で閉じてた。
…のに、枕元から聞こえる着信音に意識が遮られる。
ふーっと思わずため息を吐き捨ててしまった私は手だけを動かし、その未だに鳴り響くスマホをグッと引きよせた。
…葵。
暫く見つめてしまった画面。
諦めさせようとはしないくらいに鳴り続ける着信音にそっと指を動かした。
「…はい」
「美咲?」
数秒置く時間もなく素早く返って来る葵の声に少しだけ息を飲む。
「うん」
「ごめん、寝てた?」
「うーん…そうしようと思ってた所」
そう言いながら横向けになっていた態勢を整え、天井を見上げた。
「あ、ごめんね」
「ううん」
「美咲…、明日でしょ?」
そう言った葵の声がさっきよりも低く悲しげな声に聞こえた。



