枕元から秘かに聞こえてきた着信音。
深く被っていた布団を剥ぎとって、スマホに手を伸ばす。
掴んでグッと自分の元へと引きよせて、画面を見つめた。
…菜緒。
「…はい」
一息吐いてから声を絞り出す。
「あー、美咲ちゃん?」
「うん」
「ごめんね、こんな時間に」
「ううん」
「あのさ、荷物来たよ」
「あー…うん」
そう言えば、何日か前に送った自分の荷物。
一気に持って行けないから先送りした荷物。
そんな事、すっかり忘れてた。
「え、何?どーしたの?」
「え、ううん。何でもないけど」
「そう?元気ないじゃん」
「いや、眠りに入ってたから…」
考え過ぎて思わず適当な嘘をついてしまった。
「あー…起してごめん。ごめん」
「ううん、いいよ」
「それでさ、全部部屋に置いておくからね」
「うん、ごめんね」
「ううん。いいよー…ところでさ、こっち着くの朝方だったよね?」
「うん、確か5時頃だったと思う」
「じゃ、8日のその時間、迎えに行くから」
「うん、ありがと」
電話を切った後、もう一度布団に潜り込む。
もうこの時点で私の選択なんて決まってたんだと思う。
考えても無駄って、そう頭の中で少なからずは思ってた。
そう、思ってたんだ。



