驚いてしまった私の顔を見るなり翔は少しだけ頬を緩める。
「たまたま墓で会って。何でもないって、すみません。って、何でか分んねぇけど謝られた」
「……」
「ちょっとさすがにイラっとしたけど、俺より端正な顔してやがったから殴るにも殴れなかったけど」
苦笑い気味で軽くほほ笑んだ翔は、
「じゃ、元気で…」
いかにも私が行く方向だと分り切ったような言葉を吐き出し、バタンとドアを閉めた。
翔が居なくなったドアを暫く見つめてた。
じゃ、元気で。
そう言った翔は何をどう思って言った言葉なのかなんて分んない。
だから私もどう言う風にその言葉を捕らえていいのか分らなかった。
そしてリビングに向かって目にする物。
ポツンと置かれているのは銀色に光った鍵。
前までずっと持っていたその鍵が今、目の前に置かれている。
その鍵を掴んだ私は正直、どうしようか悩んでた。
揺らぐ先に見えるものがアタリなのか、ハズレなのか、そんなの分んなかった。



