「ごめん…」
続けてそう言った翔に視線を送ると、翔はポケットからタバコを取り出した。
今までつっ立っていた所為か足が重く感じる。
灰皿を差し出した私は椅子に腰を下ろすと、翔も同じくタバコに火を点けて前の椅子に腰を下ろした。
暫く沈黙が続いてしまった。
何をどう言っていいのか分らないから口を閉じていたけれど、翔からも口を開くことはなかった。
ただ、聞こえてくるのは微かに吐き出されているタバコの煙。
人間、相手の心なんて全く分んないからこそ本心が気になる。
でも今、それを求めているのは翔。
翔は私の答えを待っている。
多分、私が口を開く事を待っているのに違いない。
でも、だけど私の口が開こうとはしない。
“好きだよ”って、“一緒に居たい”って心の中で思っていても、それが口からは出てこない。
それも何でか分んない。
もう決めてしまった、自分の先の未来が私を邪魔してる。



