「ここでいいから」
続けてそう言った翔。
だけど何故かそうにもいかなかった。
暫く躊躇っていた足を私はゆっくりと動かす。
持っていたスマホを鞄の中に納めるとともに、そこから取り出したのは鍵。
チャリンと鍵の音を響かせながら、
「ここじゃ、あれだから…」
通りすがりに私は小さく声を出した。
玄関を開けて後ろを振り返る。
まださっきの場所に立ち尽くしている翔に何も言わずに視線を送っていると、翔はゆっくりと足を動かした。
「ごめん…」
翔はそう言って、開けてある玄関に入り込む。
スタスタと先を歩く私はリビングに入り後ろに立ち尽くす翔に顔を向けた。
「話って?」
そう言ったものの、実際は聞きたくなかった。
何を言われるのか全く分からないからこそ、翔からの言葉なんて聞きたくなかった。
…今更、なに?
「…美咲に誤解だけはされたくねぇから」
暫くたって言われた言葉に、少しだけ顔を顰める。
「誤解?」
何の事かさっぱり分からない私は更に首を傾げた。



