葵が家に来た日からなんだか不意に落ち着きがなかった様にも思う。

旅立つ日が迫るのも後、1週間と言う日々。


その前にどうしてもどうしても行きたい所があった。

行きたい所と言うか、絶対に行かなくちゃいけない場所。


そうじゃないと、許してもらえそうな気にはならなかった。


寒い寒い冬だった所為か、全然訪れていなかったママの墓場。

少しづつとゆっくりと季節が進み気づけば4月と言う春の季節になっていた。


まだ墓場にある桜の木は咲きかけでツボミが可愛く出ている。

春の風はちょっと冷たいけれど、心地よくも感じた。


足を進めママの墓を目の前に、思わず足が竦む。

まだ綺麗と言える白い花は誰がいつ供えてくれたのかも分らない。


でも、言える事と言えば最近のような気がした。

それほど枯れてはいない花。


心辺りなんて全然なくて、あたしが思い浮かぶのは葵しかなかった。


でも実際の所は誰だか分んない。

止めていた足を進めたあたしは、目の前まで来ると持っていた花を供えてあった花とともに供える。


そして、ゆっくりと目を瞑った。